フジテレビ系血液型番組大躍進の「光と影」

北斗の拳 3巻の表紙



前回は,テレビアニメ「北斗の拳」の例を使い,「企画主導型」の番組作成方式を説明した。「企画主導型」方式があれば,かなり厳格に作られた放送規定でもカンタンに骨抜きに出来てしまう,ある意味恐るべきシステムであることも読者は理解できたと思う。


さて,「北斗の拳」のマンガ版第3巻の中で「ウルトラC」と説明されている,ネットワーク局への売り込み方について,さらに詳しく説明し,血液型番組についても言及してゆきたい。
まず,説明からお読みいただきたい。


(中略)

 TVアニメ「世紀末救世伝説 北斗の拳」は「フジテレビ」系列で84年10月にスタートし,時に視聴率20%を超える人気番組となったわけだが,よくこんな過激な作品を19時というゴールデンタイムに放映できるものだと不思議に思う人もいるだろう。
 当時のフジのアニメーションは,企画主導型という局が中心となって番組を制作する方法だったため,過激な表現が満載の「北斗の拳」をアニメ化する企画が通ったということは前回のコラムで触れた。そして,さらにもう1点,フジテレビは局主導だからこそできたウルトラCを持っていた。それはネットワークのローカル局への売り方だった。

ネット局数とスポンサーの関係

 当時27局あったローカルのうち,「北斗の拳」が,キー局であるフジテレビと同じ時間帯同じスポンサーで放送されたのはたった9局しかなかった。残りの18局に関しては「廻し局」扱いで,放送時間やスポンサーはそれぞれの局に委ねられたのだ。これがどういうことかというと,「北斗の拳」アニメは,オンタイムで放送される9局分の広告料でスポンサーを集めたということだ。9局といっても全国の主要都市はだいたいカバーされていたので,「ほぼ全国ネット」。つまり,全国ネットよりはるかに安い広告料でスポンサーになれる番組だったのだ。
 多少内容が過激だったとしても,人気マンガのアニメ化なので視聴率の保証があり,しかも広告料が安いとあれば,スポンサーをあつめるのはそう難しいことではないだろう。こうしてフジテレビは「北斗の拳」のアニメーションを成立させたというわけだ。
(後略)


おそらく,現在もフジテレビ系は同様の配信システムを取っていると思われ,また他局も同様のシステムを採用してきているのではないか?血液型番組や他の番組を見ても,途中で何度もスポンサーが変わり,沢山のスポンサーを一期的に集めているのがわかる。ただし,まず番組ありき,であり,実質的な「野放し状態」になっている可能性が大きい。番組の是非を,放映後にチョコチョコと「反省会を行う」的な委員会で討議している,と言いさえすれば簡単に責任逃れできるというのでは,それこそ「青少年に与える影響」などは,全く度外視しているようなものではないだろうか。これは,どう考えても問題である。


これを書いているときも以下のようなニュースが目に付いてきた。


日本テレビ読売テレビ系で放送中のドラマ「87%−私の5年生存率−」について、本編以外の番組宣伝CMや新聞のテレビ欄などで「私の5年生存率」が削除、「87%」のみの告知に変更されたことが二十六日、分かった。「『生存率』の表現がショックだ」などというがん患者らの批判に配慮したという。


このように,ごくわずかな言葉上の問題でもテレビ局が気を使うような,そういう時代が来ているのにも関わらず依然として,あいまいで科学的とも言い切れず,かつ社会的にも問題があるようなテーマについて,堂々と番組が作られ続けていることに強い不信感を禁じえないのである。


本年に入って,さすがに「血液型スペシャル!!」と公言したような番組は影を潜めているが,番組中に,血液型コーナーを取り入れてみたりするのはまだまだ当然のように続いているようであるし,人物プロフィールに「血液型 X型」とつける習慣も何の疑いも無く続けられているのが現状だ。



さて,こういう現状を打破するにはどうして行ったら良いのであろうか??