メアリー・ルー・レットンの話

ロス五輪のヒロイン レットン選手

...といっても,「血液型性格判断とテレビ」の話に関連があるので安心していただきたい。


メアリー・ルー・レットン…と言われて覚えている方,あるだろうか。今から20年近く前,1984ロサンゼルスオリンピックの女子体操種目で,金メダルを取り,ヒロインになった…といっても,もうピンと来ない方のほうが多いのではないか?画像を見て,「あ,この人なら見覚えが…」と言う人ならあるかもしれない。


当時の時代考証からしなくてはならないか。元々オリンピックと言えば,アマチュアリズムと決まっており,選手は一切の財政援助を受けてはならず,ごくごくわずかな援助を受けただけで永久追放されるような時代すらあったのである。ところが,84年のロサンゼルスオリンピックで一躍脚光を浴びたカール・ルイスの登場などで,本格的な商業主義が持ち込まれ,選手が参加料を払うどころか,ギャラ(出演料)を受け取るやら,コマーシャルに出るやら…要するに何でも有りの状態に踏み込みかけていたのである。この辺り,アメリカは合理主義かつ個人主義であるから,選手が視聴率を稼ぎまくるにもかかわらず,一切報酬は手に出来ず,それどころか引退後は後遺症に苦しんだりするのに,何の手立てもないのは,残酷だけでなく悪質だ!!というような声が巻き起こるのは当然のようなものであった。但し,この商業主義の弊害が,今日のようなドーピングなど薬物使用など,勝利至上主義の問題などにつながっていくのである。


さて,当時----といっても現在でもそうなのだが--- ギャラを含めた成功報酬を金銭で受け取る方式について,特に問題視されたのが,未成年選手のプロ扱いであった。アメリカはかねてから自由で寛大なお国柄なのだが,そこは厳しい教育関係者もおり,「スポーツが聖域だの何だの言ったって,要するにカネじゃないか」という結末では,やはり教育上…という反論も当然あった。


そういう状況下で,女子体操個人総合種目にて,最後の1種目でルーマニアの選手を逆転し,しかも地元開催のオリンピックで,かつ17歳にて,金メダルを取ったのがメアリー・ルー・レットンだったのである。もう,今日の福原愛なんか比べ物にならないような,たいへんな人気を博し,(本人の好む,好まざるに関わらず)スター扱い,ヒロイン扱いになってしまったのである。


各社広報担当者が,彼女に目をつけたのはいうまでもない。オリンピック選手のCM契約は解禁されたといってよく,「彼女がCMに出てくれれば,それこそ売れない商品など無い!!」と思っても無理は無かったのである。



問題は,彼女は17歳の高校生であった,ということである。



その後は,どうなったかご存知であろうか??彼女はハリウッドスターにでもなったのか??

私の知る限りを記しておくと,メアリーはオリンピック後,2本のCMに出演したと聞いている。一つはスナック菓子のような…そう記憶しているが,要するに結局2本のCMのみで,少なくともオリンピック後のCM出演は終わった…と聞いている。



これについて,ある日本のコメンテイターが,「視聴者の良識が,彼女がCMスターになるのに歯止めをかけたのだ」書いていた。


私は,その考え方に少なくとも驚き,「そういう考え方もあるか…」と感じたのを覚えている。


人気者のメアリーが,CMに出れば商品が売れるのもわかっている。また,CMに出るのも彼女の自由である。しかし,視聴者が「17歳の高校生が,スポーツで得た栄誉を使ってCMで稼ぐ」という,そういう流れに歯止めをかけていたのである。
おそらく,CMのマーケット調査やユーザーの声など,沢山の評価基準があるだろう。しかし,声にならないような,たくさんの人の考え…それらが集まってか,メアリーのCMの話は,2本の後は来ることが無かった,と聞いている。





何らかのめぐりあわせで逸脱が始まったとき,何が歯止めになるか,というと,例えば,法律なり規則なりの決め事で縛る,ということがあろうと思う。だが,最も大切なのは,やはり視聴者の良識ではないか。テレビ局にだって,良心はもちろんある。だが時に,資本主義の影響からか?つい一線を越える可能性が無くは無いのである。

そういうときに,最も大切なのが,視聴者の良識である!!

一部の「血液型性格判断を何としてでも流行らせたい,血液型でなくては喰っていけない」...そういう血液型屋が何を言おうがそれに負けない,強い強い視聴者の良識の声こそ何より必要ではないだろうか?


(つづく)